能から紐解く日本史 著者 大倉源次郎 扶桑社   

文化

能から紐解く日本史

能初心者の私にぴったりな本を図書館て見つけました。

大倉源次郎

能楽小鼓方大倉流一六世宗家

人間国宝

能については色々わからないことばかりですが、この本を読んで、ほんの少しわかりかけたような、益々わからないことが増えたような、不思議な、でもワクワクする感じがしています。

本の帯

推薦文はいつも観ている、NHKBSプレミアムで放送の「英雄たちの選択」の司会者の歴史家・磯田道史氏でした。

能の基本知識

能舞台、演者、物語の種類、能の所作なども詳しく解説してあります。

子供が演じる子方子供の役だけでなく、貴人や天皇の役も演じます

本当の貴人の前で大人が天皇や貴人の役を演じると似合わなかったり、はばかられたりする為、子方が演じるようです。

五番目物=鬼物

初心者は見た目が派手で、わかりやすい鬼物から観るのがいいそうです。

世阿弥が属していた、大和結城座は鬼の能を得意としていたそうです。

そして世阿弥は動きの激しい鬼の物語だけでなく、心の鬼も描いていきます。

能面

左右非対称で、左側(向かって右)が陽右側(向かって左)が陰になります。

泣く動作では陽の目(左目)を隠すのが基本になります。

また微妙な角度の違いで、感情を表現します。

秦氏

3〜6世紀ごろに大陸や朝鮮半島経由で来日した、渡来人の一族です。

大倉さんをはじめ、能楽関係者のほとんどは秦氏の末裔だそうです。

大倉さんの正式な名前は大倉源次郎秦宗治。

世阿弥=秦元清です。

聖徳太子

聖徳太子の側近・秦河勝の一族が景教(キリスト教ネストリウス派)を信仰する人々だったのではないかと言われています。

唐の長安にあった景教のお寺(教会)は『大秦寺』(だいしんじ)で京都の太秦にある秦氏の氏寺・広隆寺の別名は『太秦寺』です。(大秦=ローマ)

聖徳太子の一族が滅びた後、秦氏は歴史の表舞台からは退きますが、経済力は維持したまま、全国に広がっていきます。

徐福

紀元前221年によって中国が統一されます。

始皇帝の命によって、徐福は不老不死の妙薬を求めて、蓬莱国を目指し、三千人の童男童女と百工を連れ、五穀の種を携え東方に船出しました。そしてたどり着いたのが日本です。

この時原始的な稲作、ユダヤ教、ゾロアスター教、仏教なども入ってきたのではないかとのことです。

ただ、稲作は南方からも入って来ているようなので、徐福ルートだけではないでしょうが。

稲作と能

大倉さんの解説では、稲作の広がりと能が深く関係していることがよくわかります。

国栖(くず)

歴史の一場面が描かれた能。

この本では、いくつかの能の詳しい歴史の背景と解説もしてくれています。

壬申の乱前夜の物語

先日も大津歴史博物館で「大友皇子と壬申の乱」展を観てきましたが、大海人皇子が挙兵する直前の能があることを初めて知りました。

「大友皇子と壬申の乱」 大津市歴史博物館

天智天皇の崩御後、吉野の山中へ身を隠した大海人皇子が、権現信仰・山岳信仰の民族の賀茂族国栖族と出会い助けられて、政権を取ったという物語です。

最後に蔵王権現が現れ、天武天皇の即位と繁栄を謡いあげます。

権現思想と役行者

権現とは姿を持たないあらゆる神仏が、神仏習合から生まれた日本独特の神や仏として顕れるという意味です。

権とは「仮の」という意味なので、「仮に現れる」から「権現」です。

役行者(賀茂役君の小角・かものえんのきみのおづぬ)

奈良・元興寺

大和国・葛城山系で舒明天皇6年(634年)生まれという説があります。

10代で元興寺で学んだエリートでしたが、その後は都での出世の道を選ばず、厳しい山岳修行を重ねました。

天智天皇7年(668年)、役行者30代の頃、吉野金峰山で修行中に現れたのが蔵王権現ということです。

歴史と能

継体天皇・在原業平・菅原道真・徳川家康などなど、能と歴史の関わりが詳しく解説してあります。

8世紀には世界中からいろいろな民族と芸能が渡来し、15世紀、室町時代に世阿弥などが集大成しました。

大倉さんのDNAには古代インドのDNAが含まれているそうです。

権現思想

日本は単一民族の国といわれますが、はじめから単一民族ではなく、たくさん民族や文化が混ざっていることがわかりました。

神仏習合もいろいろな変遷があり、現在に至っています。

能にして能にあらず。

一番能らしい能。ということですが、初心者には難易度高めです。

徳川家康は能を式楽にし、毎年、江戸城に全国の大名を集め、『翁』を鑑賞させました。

『天下泰平・国土安堵』を祈願しているそうです。

みんなで力を合わせて、頑張ろう!という考えが能にはあるようです。

これから先、いくつの能を鑑賞できるかわかりませんが、背景にある歴史も調べながら、楽しんでいきたいと思います。

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